
無に返っていくまでの猶予
完全なる自由に解き放たれるまでの
始まりから終わりまで
始まってからしばらくの記憶を
持っておらず
終わりに近づいて
遡るように湧き起こるが
結局大事なところはわからないまま
いつか聞いた音
いつか見た景色
いつかの経験の鮮烈さに
いつしか過去への羨望が
重荷に、枷に、呪いになる
始まる前にはすでに終わっていて
そこにいるのにそこにはいない
特徴的な音色が
どこかで聞いた旋律が
情景に浸る余韻と
古い記憶を引きずり出して
もの珍しそうに
興味深く確かめるように
望むものもなく
あてもなく
頭の中で晴れわたる潔さとは
実際は異なっていて
誰かに邪魔されることのない安らぎを
ひたすらに探し続けている
誰のものでもない聖域
自分だけの秘密