何も見えなかった。
何もかもが見えた。
そして瞬く間に終わったのだ。
終了。
あっけなさ過ぎて、
信じることなど到底及ばなかった。
ある基準を超えた途端に
世界は停止する。
ぼくが速くなりすぎたのか
どこか見知らぬ
未踏の地に放り出されたのか
はたまた何もかもが
全滅してしまったのか。
世界には最初から
ひとりしかいなかったのだろうか。
落ちた、朽ちた音を
跳ね返す欠片を踏みしめながら
夢見の大地で
手をすり抜けていく透明感と供に、
わたしも成仏していくのだと思う。
少しずつ消滅していく。
虹だ。
もうあの虹のふもとには
行けないけれど
この瞬間、
虹は私のものになっていた。
虹は遠ければ遠いほどいい。
虹が虹であるために、
私が私であるために。
虹がしばらくして消えて
そして私も虹を忘れる。
いつかまた虹にめぐりあえたら、
私もいつかのようにひとつになろう。