その日、一人の私が死んでしまった。
 
 
 
 
 
 

遠い過去を遡ってみても、
今まで出会ったことなどなかったし
存在することも知らなかった。
 
 
いつだって余裕を纏い、
嗜みを忘れない心でいたはずなのに

私にとっては唯一と言っていいほどに
完成されているように見えたそれは
 
優しく、
そして
 
とてつもない
暴力的な力で感覚を痺れさせた。
 
 
 
一目惚れをした。
 
 
 
 
 
一瞬の出来事で
何が何だかわからなかった。
 
自分自身じゃないみたいで
気がつけば朝も昼も夜も関係なしに
頭の中で駆けずり回っている。
 
 
 
 
自分の中にあるその想いは
自分のもののはずなのに
 
 

追いかけても追いかけても
 
 
 
 
 
距離はどんどん離れていく。
 
 
 
 
 
無我夢中になって走る。
 
 
 
抑えのきかない自分がそこにはひとりいた。
 

それからというもの、
毎日、毎晩と考えては苦悩に苛まれて
気の狂ったように
眼の色も変わってしまっていたし、
 
 
遠すぎるその存在に
 

ただどうしようもなく
打ちのめされるような

そんな無力感がすぐとなりにあって、

笑いながら私をつついていた。